福岡インターから車で10分の篠栗町食品工業団地イルガーサスにある自社焙煎所。そこには、コーヒーの香ばしい香りに包まれながら黙々と焙煎作業に励む堺さんの姿がありました。
その真剣な横顔はまるで、職人のようでもあり、研究者のよう。
焙煎一筋22年。すでにこの道を究めているかと思いきや、焙煎の世界はじつに奥深く、まだまだ探求の日々とのこと。
ファディのコーヒーのおいしさの秘訣であるこだわり。焙煎に携わる堺さんのお話しから深掘りしていきます。
大学時代からコーヒーが好きだったので、将来はコーヒーの仕事がしたいなと思っていました。ちょうどその頃、近所にファディの店舗ができて、コーヒー豆を買ったりカウンターで飲んだりしていたのですが、思えばその頃からご縁があったのかもしれませんね。
もともと“ものづくり”に興味がありました。焙煎は“味づくり”ではあるのですが、共通する部分がたくさんあって「面白そう」と思ったのがきっかけですね。性格的にも一つのことをコツコツと究めていくのが好きなので、もう焙煎を22年もやっていますが「性に合っているな」としみじみ感じています。ただ、入荷した豆を倉庫に積んだり、焙煎機に入れたりというのが結構な重労働で、1袋60~70kgあるので思った以上に体力が必要ですね。
いろいろな国にコーヒー豆を買い付けに行ったり、コーヒーの国際品評会COE(カップオブエクセレンス)の審査員として参加したりできることですかね。語学力はそこまで上達してはいないんですけど、コーヒーを軸にコミュニケーションが広がっていくのはうれしいですし、すごくやりがいがあります。国や経済状況は違えど、お互い一生懸命仕事をしているとわかり合える部分がたくさんあるんですよ。大好きなコーヒーを真ん中にご縁がつながっていくのはワクワクしますね。
ファディのコーヒー豆選びの基準は、有名な農園だからとかではなく、純粋に「おいしさ」を基準にしています。年に2~3回ほど豆の買い付けのために海外に行っているのですが、そこで実際に農園を見て回り、土の作りや周りの自然環境などを知った上で実際に飲んでみて「おいしい」と思えたものだけを仕入れるようにしています。
コーヒー豆の栽培ってそれほどこだわりがないと思われがちですが、栽培方法から収穫、生豆を取り出すまでの工程で、生産者さんたちはあの手この手で試行錯誤を重ねているんですよ。
実際に農園を訪ねたりメールでやりとりしたりするうちに、生産者さんたちの熱い思いを感じるし、距離がぐっと縮まっていくんです。ご縁の一つ一つに本当に物語があるから、どの豆も焙煎で最大限においしさを引き出していけたらと思っています。最終的な焙煎ですべての味が決まるので、生産者さんたちの思いがお客様に届き、「おいしい」と喜んでもらえるよう思いを込めています。
ファディにはCOEの審査員が4人います。現地で審査員の方たちとコーヒーを飲んで点数をつけて評価していくのですが、正しく評価がなされているか、個人として安定した評価をしているか、評価のばらつきがないかなどのほか、審査員としてのマナーもみられます。
ファディでは海外での審査でCOEに認定されたコーヒーのサンプルを取寄せ、自分たちで焼いて、味を確認して落札するかどうかを決めていくんです。生産量の少ないコーヒーでも競り落として販売できるのは、大手にはない強みでもあるし面白さでもあります。
「そういえばファディがあったね」。おいしいものを食べたい時、夕飯のメニューに困った時、子どものおやつに悩んだ時、そんな風にふっと思い出してもらえる存在でありたいなと思っています。お客様の生活をちょっと豊かにハッピーにしたいと願うファディの思いを、自分の焙煎するコーヒーを通じて少しでも伝えていけたらうれしいですね。
今回はファディのコーヒーについてお話しましたが、他社さんの缶コーヒーだってコンビニのコーヒーだって、どの商品にも本当にいろいろな人の思いがこめられていて、 いろいろな人の手が関わって出来上がっています。コーヒーに限らず何かを作っている現場なら、どこにいっても心が震えるような素晴らしい光景がそこにあるのではないかと思います。 ものづくりに興味があるなら思い切って飛び込んでみて、ぜひこの感動を体験してほしいと思っています。